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「サラリーマンであっても…、いやサラリーマンだからこそ、最高の技術と最高のアイデアを持ち、最高の仲間がいれば、ここまでの事業ができることを証明したかった」と、家庭用ゲ−ム機「プレイステーション」の発想者、開発者であるK(現・ソニー・コンピュータエンタテインメント副社長)は、言い切った。
創立四年目にして連結売上高七〇三〇億円。
プレイステーションビジネスは、ソニー・コンピュータエンタテインメントに、凄まじい経営数字をもたらした。
創立わずか四年で、これほどの売上まで急成長する例など他に皆無であり、まさに現代の奇跡といっていい。
プレイステーション機の累計出荷台数は一九九八年九月現在、全世界で四〇〇〇万台にも達した。
あれほど強大だった任天堂王国を打ち破り、名実共に、世界一のゲ−ム・プラットフォームにのし上がったのである。
ソニーのO典雄会長は、言った。
「ソニー・コンピュータエンタテインメントは驚くほど少ない人数で、あれほどの業績をあげている。
これはソニー本体も見習うべきである」。
実際、ソニー連結決算の営業利益においてソニー・コンピュータエンタテインメントの寄与分は、全体の二三パーセントにも達している。
つまりソニーの利益は、プレイステーションビジネスに支えられていると言つでも過言ではない。
この急激な成長はいかに実現されたのか。
その秘密は、Kの「最高の技術と最高のアイデアを持った、最高の仲間がやった」という言葉に、端的に語られている。
ベンチャービジネスの隆盛の必要性が叫ばれて久しいが、ゼロから、もしくは大企業をスピンアウトして立ち上げるシリコンバレー型のベンチャーは、わが国では成功の確率は低い。
成功したとしても、一挙に、世界的な大規模ビジネスに急拡大させるのは、きわめて難しい。
ところがプレイステーションの場合は、サラリーマンが思い立った企業内ベンチャーだから、ここまでのことができた。
ソニーという大企業の分厚いリソースを巧みに活用したのだ。
それが「サラリーマンの、最高の仲間たちがやった」という意味だ。
それも「革命的なサラリーマン」である。
Kとその仲間たちはホ−ムエンタテインメントの世界を一新するキーワードとして「デジタル」に狙いを定め、その可能性をプレイステーションというゲ−ム・プラットフォームで引き出し、さらに革新的なビジネス・モデルを打ち立て、業界に巣くう因習を徹底的に打破していった。
そのすべてが、あの驚異の高成長の実現と業界制覇に結実したのである。
Kとその集団こそ、「ソニーの革命児」と呼ぶにふさわしい。
彼らは、いったい何をやったのか。
「システムG」との出会い信じられないような凄い映像が眼前のモニタ画面に展開していた。
画面には、コンピュータグラフィックスで描かれた人の顔が映っている。
それが、スライド・ボリューム一つで即座に変形するのである。
顔が大きくなったり、小さくなったり、隣の物体と合体したり、また離れたりする。
時は一九八四年九月、ソニー厚木工場の情報処理研究所内の一室でのことだそれを実行しているコンピュータグラフィックス・システムlltGAZO(画像)から名をとって「システムG」といったーーが画期的なのは、リアルタイムで三次元画像にテクスチャ・マッピングできることにあった。
つまり、命令を与えると即座に画像が動き、しかも、それは本物らしい質感を持ったオブジェクトなのだ。
当時でも、計算に時聞をたっぷりかければ、そんな動作は可能であったが、命令に瞬時に対応し画像を変形できるものは、これをおいてほかになかった。
、ボタンを押すと、即座に動くそれに、K(現・株式会社ソニー・コンピュータエンタテイメント〔SCEI]副社長)はびっくりしたのだ。
「当時の最先端のグラフィックス・システムよりはるかに進んでいた。
凄かった。
のかと感動しましたよ」。
こんなものがあるシステムGは、放送局用のリアルタイムのエフエクターとして開発された三次元処理のジオメトリック(座標)エンジンである。
現在、どんなところに使われているかというと、たとえば日本テレピの「電波少年」で顔が大きくなったり小さくなったりするCG画像は、システムGが処理している。
情報処理研究所(現在は解散)は当時、ソニーのデジタル信号処理研究のメッカであった。
デ−タ圧縮技術ゃ、不ットワ−ク技術、通信プロトコルなど、さまざまなデジタル技術が研究されていた。
久Tもそこの研究員だった。
その時、Kがこの研究所にいたこと、所内でシステムGという試作のコンピュータグラフィックス・システムが産声を上げていたこと、そしてある時、両者が出会ったことは、まさに運命の糸の導きと言ってもよかった。
KはシステムGの自在に動く映像を見て、こうひらめいた。
「これでゲ−ム機ができたらどんなに凄いだろう…」この瞬間である。
後に誰でも使えるグラフィックス・コンピュータのプレイステーションとして花開くシステムの発想が生まれたのは。
システムGとゲ−ム機が合体したら、どんなにか面白く、そしてどれほどワクワクするゲ−ムができるだろう。
当時のファミコンは、二次元のシンプルな映像だったが、ゲームとしての面白きは、群を抜いていた。
それとシステムGが一緒になったら、どれほど素晴らしいことだろう・・・。
Kは、もともとコンピュータグラフィックスには強い関心を抱いていた。
大学の卒論は医療機器へのコンピュータグラフィックスの応用というテ−マだった。
CTスキャンなどで得られたX線画像や、血液中ヘモグロビンの個々の形状から、いかに異常箇所を検出するか、変形した細胞の核を抽出していかに目に見えやすくするかという研究であった。
コンピュータグラフィックスが好きだったので、一目で分かったのだ。
Kは、そもそもコンピュータというものも大好きだった。
ゲ−ムも、パソコンも手当たり次第手に入れていた。
Kの興味はハードウエア、特に半導体技術やマイクロプロセッサの応用に「ちょうど大学の研究室にいた時、インテルが4004、8080のマイクロプロセッサを出してきました。
早速、当時神間にあったピジコン社に駆けつけて、世界最初の電卓を買い込みました。
当時一〇万円もしました。
今では大切な宝物です。
ソニーに入社してから、可ピンポンゲ−ムのLSIのサンプルを手に入れて、組み立ててスキ−場に持って行き、宿屋でテレビに接続して、結構楽しんでいましたよ」。
それらの経験からしでも、目の前でこんなに自在に、しかも即座に画像が命令どおりに動くというものは、見たことがなかった。
これがゲ−ム機だったら、どんなに素晴らしいか。
ファミコンは八三年に出たばかりのものを、当時二歳の息子のために買ってみて、これは面白いと思った。
「商売人モ−ドでテストしてみました。
子供にソニーのMSXとファミコンを目の前に与え、どっちを選ぶかを観察したら、ファミコンを選んだ。
MSXよりずっと楽しそうに遊んでいた。
ファミコンって、凄いなぁと思いました」。
か商売人モ−ド。
とは、いかにもKらしい言い方だが、要するに、ピジネス的な可能性をチエツクしたということだ。
ファミコンの何に感激したのか。
「IBM/PCは当時グリーン一色の画面でしたよね。
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